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意匠登録出願

 物品等の美的外観のデザインである意匠を保護するためには特許庁に意匠登録出願を行い、審査を通過して設定登録されることが必要です。
 このように意匠は、特許庁に登録されることで初めて権利(意匠権)として保護されます。

 意匠権を取得するまでの手続の流れ(概略)(別タグ表示)

権利化できる意匠とは?

 意匠法で「意匠」の定義は、「物品・建築物若しくはそれらの部分の形状、模様、色彩若しくはそれらの結合又は画像 (機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されたものに限る)若しくはその部分であって、視覚を通じて美観を起こさせるもの」 とされています。

 以前は、建築物は意匠法の保護対象として認められませんでしたが、法改正により意匠法の保護対象となりました。

 また、同時に使用される2以上の物品、建物又は画像で、組物全体として統一があるものは、組物の意匠として登録することができます。

 そして、次の要件に該当するときは、内装の意匠として登録することができます。

  • 店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾であること
  • 複数の物品、建築物又は画像で構成されるもの
  • 内装全体として統一的な美感があるもの

 なお、以下の要件に該当するものは、意匠として登録されることはありません。

  • 公序良俗に反するものや公衆の衛生を害するもの
  • 他人の物品等と混同を生じるおそれがあるもの
  • 物品の機能を確保するため若しくは建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなるもの
  • 画像の用途にとって不可欠な表示のみからなるもの

 「意匠」は、上記の基礎的要件を満たして初めて「意匠」として保護されます。

関連意匠を考えよう!(その1)

 意匠法には、一定の条件の下、1つの自己の意匠(本意匠)に類似した意匠(関連意匠)を複数出願できる関連意匠制度があります。
 かかる関連意匠制度では、基礎意匠(最初の本意匠)の出願日から10年以内に関連意匠の出願をすることができます。
 更に、関連意匠に類似した意匠も基礎意匠の出願日から10年以内に関連意匠の出願をすることができます。

 意匠権は、類似の意匠にも権利範囲が及びますが、類似範囲は狭いため、デザインのバリエーションが多い場合は、一つの出願では広い範囲をカバーすることができません。

 したがって、事業戦略を考慮の上、本意匠や関連意匠に類似する関連意匠も考えるようにしましょう。

意匠が完成したならば!?

 意匠登録出願を行う前に気を付けなければならないことは、意匠が完成したからといって、喜び勇んで意匠を守秘義務のない他人に見せないようにしましょう。 親や兄弟等の親族であっても注意が必要です。

 意匠を出願前に公表した場合は、一定の条件を満たさない限り権利化することができません。
 なお、我々弁理士は顧客に対して守秘義務がありますのでお気軽にご相談下さい。

 その他、意匠を権利化するには大まかには、以下の実体的要件を満たす必要があります。

  • 意匠が工業上利用できること
  • 出願前に同一又は類似する意匠が他人により公表又は刊行物等に掲載されていないこと(新規性があること)
  • 意匠が、公表され又は刊行物等に掲載された公知意匠から容易に創作できないこと(創作非容易性があること)
  • 同じ意匠が他人により先に出願されていないこと(先願であること)
  • 出願後に公開された他人の先の出願に記載され意匠の一部と同一又は類似していないこと(先願の一部と同一又は類似でないこと)

 したがいまして、意匠が完成したら、公表せずに速やかに意匠登録出願することが大切です。

事前調査をしよう!

 上記のように、新規性・創作非容易性のないものは権利として登録されません。 無駄な出願をしないためにも、同一又は類似の意匠が製品化されてないか、又は先願がされていないか等の先行意匠を調べる事前調査を行なう必要があります。
 弊所では、事前調査を行いますが、創作者自らかかる調査を行なうことを推奨しています。

 一般的な事前調査としてインターネットのGoogle等の検索サイトによる調査の他に、 特許庁の検索データベースであるJPlatPat画像意匠公報検索支援ツール(Graphic Image Park)(以下、GrIP)を使用した意匠調査を行います。 項目ごとのキーワード検索も充実しているので、Google等の検索エンジンでの検索に慣れている方は感覚的に操作し易いと思います。
 JPlatPatとGrIPの提供団体であるINPIT(インピット)はJPlatPatとGrIPの利用方法に関する講習会の動画とテキストを公開しています。 動画は1.5時間程度で倍速再生もできますので検索前に受講しておくと良いでしょう。

 なお、海外での事業展開を考えている場合は、海外で意匠を保護するために各国毎に出願する必要があります。各国でも大抵の国では全世界基準で新規性及び創作非容易性が登録要件として 判断されますので、実施する国における意匠調査を行なう必要があります。
 諸外国の検索データベースへのアクセスはリンクのページの外国知財サービスの項目をご参照下さい。  

出願書類を作成しよう!

 意匠登録出願を行うには、意匠の六面図等を記載した図面(図面の他に写真、ひな形又は見本でもよい)の出願書類を一定の様式で作成し、願書に添えて特許庁に提出しなければなりません。
 なお、意匠の形状が変化するような動きのある意匠については、その説明を願書に記載する必要があります。

 弊所では、創作者・出願人と相談しながら出願書類を作成致します。
 通常、書類の作成開始から出願まで1~2週間かかる場合がありますので、意匠の実施開始日を考慮して余裕を持ってご依頼して下さい。

意匠の実施時期を考えよう!

 意匠法は、登録後に発行される意匠公報により、意匠の内容が公開されます。

 しかし、意匠を製品として実施するまで、意匠の内容を秘密にしたい場合があります。 かかる場合、意匠法では、登録日から3年を限度に意匠の内容を公開しないように請求できる秘密意匠の制度があります。

 出願する意匠を秘密意匠にする場合は、出願又は設定登録の年金納付と同時に請求する必要があります。また、秘密にする期間は、延長又は短縮することができます。

 なお、秘密意匠の制度は日本のみの制度です。後述する国際出願や海外への出願には適用されない場合があることに注意して下さい。

 図面等の必要書類を作成したら特許庁に意匠登録出願します。

 海外での意匠権の取得も考えている場合は、ハーグ協定に基づく国際出願又はパリ条約の優先権を主張して各国へ出願する必要があります (ハーグ協定に基づく国際出願は1つの手続で複数の国へ出願手続ができるものです。)。

 もし、出願から1年前以内に意匠を自ら公開してしまった場合は、新規性喪失の例外の適用を受けるための手続を出願と同時にする必要があります。 但し、かかる例外規定は日本のみの規定ですので海外では適用されない場合があることに注意して下さい。

 なお、意匠登録出願をしたら、登録後に発行される意匠公報により、創作者と出願人の氏名及び住所が公開されますのでご注意下さい。

出願してから6月以内にすべきこととは?

 出願後、6月以内であれば、その出願を基礎として、パリ条約の優先権を主張して各国別々に出願したり、国際出願することができます。

 したがって、出願して6月は、将来、海外で事業展開する必要はないかを検討する必要があります。

登録査定・拒絶理由通知

 出願後、拒絶理由がない場合は登録査定がされますが、拒絶理由がある場合は拒絶理由通知が特許庁より通知されます。

 拒絶理由通知には、意見書及び手続補正書を提出することにより対応します。意見書及び手続補正書を提出することにより拒絶理由が解消した場合は登録査定がされます。

 しかし、拒絶理由が解消されない場合は、拒絶査定が通知されます。拒絶査定が不服の場合は、拒絶査定不服審判により対応することになります。

意匠の権利化!

 登録査定後、一定の期間内に1年度分の登録料を支払うことにより設定登録がされ、意匠を登録意匠として権利化することができます。

 ここで注意したいのは、登録してから1年はあっという間で、次年度の年金を納付し忘れて、気がついたときには権利が消滅してしまっていたという話をよく聞きます。
 弊所では、このようなことがないように登録査定時には3年度分まで納付することを推奨しております。

関連意匠を考えよう!(その2)

 登録後も上記で述べたように、基礎意匠の出願日から10年以内であれば、基礎意匠や関連意匠に類似する意匠を出願することができます。
 したがって、現在又は将来の事業戦略に基づいて関連意匠を新たに出願するか否かを考えましょう。

 なお、本意匠の登録後は以下の要件を満たす場合は、関連意匠の出願はすることができませんのでご注意下さい。

  • 本意匠の意匠権が年金未納付により消滅していないこと
  • 本意匠の意匠権の無効審判が確定していないこと
  • 本意匠の意匠権が放棄されていないこと
  • 本意匠の意匠権に専用実施権が設定されていないこと

意匠権を適切に管理しよう!

 意匠の設定登録後は、誰でも意匠登録無効審判を請求することができます。
 権利者(意匠権者)は、この無効審判に対応しなければならず、審決が確定した場合は、意匠権は消滅します。

 そして、意匠権者は、他人が登録意匠を実施して意匠権を侵害していないか市場を監視する必要があります。適切に市場を監視していない場合は、 侵害により利益が減少したり、時効が過ぎて損害賠償等の権利行使ができなくなったりします。

 また、意匠権の存続期間は出願日から25年(関連意匠については、基礎意匠の出願日から25年)ですが、登録日から権利維持のための年金を特許庁に納付する必要があり、 意匠権が消滅しないためにも年金の期限管理を行なう必要があります。
 登録意匠を実施していない場合は、年金の納付が事業負担となりますので、現在又は将来ともに、その権利を維持する必要があるのか検討する必要があります。

 なお、特許庁では、メールを利用して次期年金納付期限日を通知する特許(登録)料支払期限通知サービスや、 申出人の予納台帳または指定銀行口座から年金を徴収し、特許(登録)原簿に一年ごとに自動登録する自動納付制度 がありますので期限管理の補助として利用を検討すると良いでしょう。
 但し、かかる通知サービスは登録件数に制限があり、通知先のメールアドレスが変わった場合やメールサーバーの障害があった場合は通知されない、 また、自動納付は使用していない登録意匠であっても自動納付取下書を提出しない限り年金が徴収されるというリスクはありますので、自己による期限管理は必須です。

 もし、期限を過ぎて年金納付を忘れてしまったとしても、期限日から6月以内であれば、年金の倍額を払うことにより権利の消滅を防ぐことができます。
 しかし、気がついたときには既に6月以上経過していたということが多いので、くれぐれも期限管理は十分注意をするようにしましょう。

 以上、意匠登録出願について大まかにご説明致しましたが、ご理解頂けたでしょうか?

 意匠を権利化するためには上記のような段階を踏む必要があります。そして、権利化後も長く付き合わなければなりません。

 弊所では、長年、意匠登録出願から訴訟まで顧客に対してのご支援を行って参りました。意匠登録出願に関してのご支援が必要な場合は、お気軽にお問い合わせ頂ければと存じます。

 また、個人・中小企業やベンチャーの方は、出願費用が負担で国内や海外での意匠登録出願を躊躇しているのであれば、国や自治体等の補助金・助成金の制度がありますので利用を検討してみては如何でしょうか。
 J-Net21東京都知的財産総合センターのサイトで助成金等の知財支援の情報が掲載されています。 弁理士会でも援助金の支援を行っています。
 なお、助成金・補助金の申請時期はその年の4~10月で、応募も数回ありますが、事業計画の記載が要件となっている場合が多く、申請書類作成に時間がかかります。 また、予算の関係上、応募数が多ければ早めに応募を締め切る場合もあります。
 したがって、助成金・補助金を申請する場合は、余裕を持って早めに準備するようにしましょう。


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